抹茶モンブラン
 仕事の方はそんな感じで何とか頭をフル回転させて頑張っていたけど、私生活の方ではガタガタになりつつあった。
 その原因はプライベートな事だったから、職場にそれを持ち込まないよう仕事に集中するよう心がけていた。

 ちょうど2週間ほど前の事。

 休日の午後、私は次の週に食べるものを買いだめしようと思って近所のスーパーまで買出しに出た。
 あまり重いものは持ちきれないから、とりあえず野菜とか肉・魚などコンビニとかでは手に入らないものを重点的に買う。
 ほうれん草が激安で売られてたからって以前主婦をやっていた時みたいにガバッと買う事は無い。一人分の食材なんて、それほど多く買っても意味が無いからだ。
 夫に食べさせるんだって思っていた頃は料理も好きで頑張っていたけど、一人になってからは本当に適当になってしまった

 油の買いおきも無かったなあとか思いながら売り場をキョロキョロしていた、その時…。

「ハナちゃんはまだ食べられないんだからー!」

 という明るい女性の声が聞こえた。
 ふっとそっちに目線を向けて、私の体は一瞬にして凍った。
 前夫と、その再婚相手が嬉しそうに手をつないで歩いていたのだ。
 彼は肩からスリングをかけて、中には小さな赤ちゃんが入っている。

(彼の子供なんだ。私の間には授からなかった…赤ちゃん。新しい奥さんとの間には無事に生まれたんだ)

 猛烈な衝撃と、思い出したくない嫌な記憶が蘇って、私は買おうとしたものを全て売り場に戻してスーパーを立ち去った。
 心臓はドクドクで息が苦しい。
 耳はキンとなって外の音もあまり聞こえない。
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