抹茶モンブラン
これはハッキリした気持ちだし、偽りは無い。
なのに、真っ向から「彼女をあなたは幸せにできるのか」という言葉を投げられたら、逆上しそうなほどの怒りがこみ上げ、その次にどうしようもないほどの不安が押し寄せた。

高田の紳士ぶりにも軽く腹が立つ。

あいつはオフに仕事を一切持ち込まない主義だ。
僕みたいに四六時中仕事の事ばっかり考えてる仕事病ではない。
だからといって仕事のクオリティーが低いかというとそうではなくて、新しい論文が着々と仕上がっているのは何度か中間報告を受けて知っている。

僕は要領が悪いのか?

毎日、毎晩、外との交渉に追われ、その一方で自分の研究も進めなければいけない。
成果が上がらなければ会社の経営そのものに響いてくると思うと、自分一人の問題ではないというプレッシャーもかかる。

逃げ道が無くて、息苦しくなる。

こんな追い詰められた僕を救ってくれていたのは鈴音という存在だ。
彼女と一緒だと何も語らなくても安らげるし、他愛の無い会話も嬉しくて、繰り返すキスの味は常に甘い。
< 115 / 234 >

この作品をシェア

pagetop