抹茶モンブラン
 謝罪の言葉も出てこない。
 僕自身が泣きたい衝動に駆られていて、どうしたらいいのか全く分からない。
 こんなに近くにいる愛しい人を、僕は暴力とも言える性衝動で怯えさせている。

 最低だ……。

 心が敏感な鈴音の精神をさらに蝕むような事をしている。

 僕を嫌ってもらってもいい。
 こんな男からは離れた方がいい。
 そう思うけれど、口には出来ない。

 鈴音は僕に別れの言葉は言わなかった。
 ただ、悲しみに打ちひしがれたように静かに泣いている。

「どうして……私が愛しているのは光一さんだけなのに……」

 彼女の声が僕の心をますます強烈に締め上げる。
 悲鳴を上げそうになっているのは、僕も同じだった。


 シャワーを浴びて、鈴音は静かに着替えを済ませ、無言のままアパートを出て行った。
 夜眠れないと言う彼女が、僕の隣で寝るのを拒否した。
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