抹茶モンブラン
 恋愛の初めに感じたあの暖かい気持ちはどこへ行ってしまったんだ。
 鈴音に対する独占欲が増すに従って、僕の心はどんどん狭くなる。
 彼女は僕との関係を大事にしたいと思ってくれていて、だからこそゆっくり近付こうとしていた。
 それを分かっているのに、高田の部屋に泊まったという彼女を許せなかった。

 何て心の狭い、子供じみた男なんだろうか。

 ベッドサイドで頭を抱え、僕は泣きたくても泣けないほど胸が苦しくなっていた。

 好きな女性の一人も満足に幸せにしてやれないのか、僕は。
 仕事なんて全部言い訳だ。

 それを高田は証明している。
 あいつは今僕が抱えている仕事の量が入ってきても、きっとどれか仕事を犠牲にしてまで愛しい人の為に時間を割くだろう。
 それが高田という人間で、仕事はそういう割り切りも必要だ。
 
 結局……僕は仕事というジャンルに甘えきっているのかもしれない。

 実際、海外で僕が仕事をしている様子を見て「クレイジー」と言っている同業者もいた。

 肌を合わせたら全て解決すると思っていた僕は、相当な恋愛初心者だ。
 まさか肌を合わせた事によって、より一層の独占欲が沸くとは予想外だった……。
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