抹茶モンブラン
「あ、乙川さん」
挨拶だけして通り過ぎようとした事務室前で、私は呼び止められた。
「はい。どうしました?」
足を止めて事務室の中を見ると、明らかに若いというのが分かるスーツ姿の女性が目に入った。
「前に鹿児島での写真で一度見たでしょう。鮎川紗枝(あゆかわさえ)さんっていう方でね、来年根元さんが定年でしょう。でも、新しい人は雇う余裕無いとか言われてたんだけど、たまたま鹿児島では人手が足りてたみたいで。それで鮎川さんに東京へ来てもらう事になったのよ」
そう説明され、私はずっと光一さんさんに聞けずにいた女性の名前を予想外なかたちで聞く事になった。
「鮎川です。東京は全然慣れない土地なんで……、色々教えてください」
そう言って、鮎川さんは丁寧に頭を下げた。
真っ黒なツヤのある長い髪がさらりとゆれる。
決して濃すぎないナチュラルメイクと、薄く色付くピンクの唇。
初対面から好感度の高い女性だなという印象だった。
「乙川鈴音といいます。私もこの職場では初心者なので、どれぐらいお手伝いできるか分からないですけど、何かありましたら気軽に声をかけてください」
「はい。堤さんから乙川さんの事は伺ってました。お会い出来て嬉しいです」
そう言って、彼女は気さくに握手を求めてきたから、私はその手を軽く握った。
挨拶だけして通り過ぎようとした事務室前で、私は呼び止められた。
「はい。どうしました?」
足を止めて事務室の中を見ると、明らかに若いというのが分かるスーツ姿の女性が目に入った。
「前に鹿児島での写真で一度見たでしょう。鮎川紗枝(あゆかわさえ)さんっていう方でね、来年根元さんが定年でしょう。でも、新しい人は雇う余裕無いとか言われてたんだけど、たまたま鹿児島では人手が足りてたみたいで。それで鮎川さんに東京へ来てもらう事になったのよ」
そう説明され、私はずっと光一さんさんに聞けずにいた女性の名前を予想外なかたちで聞く事になった。
「鮎川です。東京は全然慣れない土地なんで……、色々教えてください」
そう言って、鮎川さんは丁寧に頭を下げた。
真っ黒なツヤのある長い髪がさらりとゆれる。
決して濃すぎないナチュラルメイクと、薄く色付くピンクの唇。
初対面から好感度の高い女性だなという印象だった。
「乙川鈴音といいます。私もこの職場では初心者なので、どれぐらいお手伝いできるか分からないですけど、何かありましたら気軽に声をかけてください」
「はい。堤さんから乙川さんの事は伺ってました。お会い出来て嬉しいです」
そう言って、彼女は気さくに握手を求めてきたから、私はその手を軽く握った。