抹茶モンブラン
 その存在を失う微かな可能性に、とんでもなく嫉妬してしまうのも、好きなお母さんを奪われてしまいそうな小さな男の子のように見えたりすることもある。
 そんな彼だけれど、鮎川さんに対しては懐大きく接しているようで、彼女の事は親友の妹さんという事もあって大事に守っておきたいのかな……という印象だ。

「で、肝心の鈴音はどうなの」

 コーヒーカップをカタンと皿に戻し、久美が強い目線で私を見た。

「え、私?」
「そう。その同業の高田さんっていう人の事はどうも思わないわけ?」

 高田さんをどう思っているか……あまり考えていなかった。
 一緒に居ると安心だし、言葉を多く語らなくても居心地が悪くないというのはあるけど、この安定した気持ちって何だろう。

「寝てみれば」
「え!?」

 私は驚いて手にしていたクッキーをまるごと床に落とした。

「な、何言ってんの?」
「男としてどうなのか……って、多分寝てみれば一発で分かるよ」

 久美の提案はとっぴ過ぎてついていけない。
 なるほどと思う事がある反面、飛躍しすぎじゃないの……と思う事もある。

< 146 / 234 >

この作品をシェア

pagetop