抹茶モンブラン
「ありがとう久美。今まで悩み事って自分で解決するのが当たり前だったんだけど、たまには自分以外の人の意見も聞いてみるべきだね」
 
 私がホッとため息をつきながら笑顔でそう言うと、久美も嬉しそうな表情をした。

「鈴音が私にこうやって相談してくれるの、すごく嬉しかった。だからこそ、うまくいって欲しいなって思ってるの。素直に気持ちを伝えられるといいね」

 こうして、私は再度光一さんを好きな自分を確認し、積極的になるべきなのは私の方なんだと思った。
 忙しい彼に遠慮せず、会いたいくて眠れないぐらいの時は素直に「会いたい」と伝える事も必要だったのかもしれない。

 私からのアプローチ……光一さんはどう受け取ってくれるだろうか。

 しばらく顔も見ていなかった。
 出張続きで連絡もあったり無かったり。
 私の心は日を追うごとに弱くなり、人の温もりが無い生活というのがいかに寂しいかを思い知っていた。

 それでも、もう薬に頼るのをやめようと、少しずつ飲む量を減らしていて、眠れない夜にもあまり深く考えずに眠くなったら寝ればいいと考えるようになった。
 俊哉に会った事で過去へのわだかまりが若干薄れ、今は光一さんの手をもう一度握りたいという気持ちが強くなっていた。

 行動を積極的に起こそうと思うんだけど、きっかけがつかめない。
 もともと光一さんは強く迫ってくるタイプの男性ではない。
 あの海ほたるでの一件があったからこそ、彼は私にそれとなく好意を伝えてくれた。

 思い出の場所。

 私は漠然と「もう一度海ほたるに行きたい」と思っていた。
 車を持っていない私には行けない場所で、だからこそ、もう一度光一さんと一緒に行きたい。
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