抹茶モンブラン
 部屋に上がって電気をつけ、部屋の暖房にようやくスイッチを入れた。

「鈴音。こんな寒い部屋にずっといたの?風邪ひくだろ」

 そう言って、光一さんは少しでも自分の温もりが伝わるようにと、両手を私の手に重ねて暖めてくれようとした。
 でも、彼の手はもともと冷たいから実は私の手の方が温度が高かった。
 それでも彼の手に包まれる自分の手を見るのは結構嬉しくて、ずっとそのままにしていた。

「ごめん、鈴音と会えない間色々考えてて。ちゃんと話す機会がなかったんだけど、紗枝は俺が一番信頼してた親友の形見みたいなものなんだ」

 落ち着いたトーンで光一さんは語りだす。

「妹っていうのとも違うんだけど……、とにかく親友にはずっと彼女の事は任せておけと誓っているし、実際彼女が何か困っていたら力になってあげようと思ってる」

「そう……」

 私がまだ落ち込んだ様子なのを気にかけるように、彼は言葉を継ぐ。

「さすがに結婚相手まで世話しようとは思ってないけど……鈴音はこういう関係でもやっぱり嫌な感じがする?」

「ん……」

 まだ温まらない部屋のソファに並んで座って心を探り合う。

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