抹茶モンブラン
「うん、僕も少し仕事を調整して、もっと鈴音と過ごせる時間を多く持てるように努力する。せめて夜ぐらいは君の隣で寝付くのを待つぐらいの時間はとるようにするよ」

 こんな会話で、私達は少しずつお互いの距離を縮めあった。
 心の交差点は思ったよりも近くにあって、少し勇気を出して進めば愛しい人との出会いが待っていた。

 その夜、本当に久しぶりに光一さんの隣で眠った。
 お互いが求め合っていたのを確認し合うように幾度かのキスを交わした後、私は我慢できなくて光一さんの体をぎゅっと抱きしめ、自分がどれほど彼を欲していたのかを伝えようとした。

「鈴音」
「……何?」

 ふいに光一さんは私の体を抱えたまま、思い出したように口を開いた。

「僕は……ずっと仕事で命を落とすかもしれないと思ってた」
「…………」
「でも、僕の命を危うくしてたのは仕事じゃなかったんだと分かったよ」

 何かを納得したような目で、彼はじっと天井を見ていた。

「何?光一さんを追い詰めていたのは」

 そう問うと、彼は少しの沈黙の後こう言った。

「孤独だよ」

「……孤独?」

 私は思ってもない言葉を聞いて、不思議な気持ちになった。
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