抹茶モンブラン
「もちろん仕事は嫌いではないけどね。でも、鈴音がいつか不意に僕の前から消えてしまうかもしれないという事を考えるようになってから、僕は仕事をしているだけでは寂しいと思うようになった。仕事が僕を孤独から救う唯一のものだったのに、鈴音の存在はそれを上回ったんだ……」

 彼が思っているのは、私が感じているものと一緒だった。
 私も俊哉に捨てられ、生きる意味を失っていて。
 毎日生きているのか死んでいるのか分からない日常だった。

 でも、光一さんの存在が少しずつ私の心を癒してくれていた。
 彼の前では泣いたり取り乱したりする事が出来て、隣に眠ってくれるだけで私は心地のいい夢を見る事が出来る。

 彼の言った通り、孤独は人間を生かしながら殺すものだなと改めて思う。
 誰だって誰かから必要とされたいと思っていて、そして誰かを必要だと思っている。

 私には光一さんが必要。

「光一さん……私もあなた無しでは生きられない。ずっとこれは同じ気持ちだったけど、しっかりと自分の中で認識するのに時間がかかってしまったの」

「僕は……随分前から鈴音を必要としてた。その伝え方はちょっとスマートとは言えないものだったけど、今でも多分君以上に僕は鈴音を求めているよ」

「……」

 お互いの視線が交差し、再びとろけるような甘いキスを繰り返す。
 そう、キスが甘いと感じるのは心がとけた証拠。
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