抹茶モンブラン
 光一さんの心を裏切る事も、ある意味それは誰かを不幸にするという事と一緒なのかもしれない。
 でも……今の私には光一さんと付き合い続ける選択肢は残されていない気がしていた。
 鮎川さんからの必死の告白を受けてから2週間ほど、私はずっとこの事だけを考えていた。
 光一さんと会っている時も上の空で、何故か彼に抱きしめられる度に軽い罪悪感が伴うようになった。

 私は心が強くできていない。
 鮎川さんが苦しんでいるのを知っていながら、光一さんと楽しい時間なんか過ごせるはずがない。

「鈴音……ここ最近元気が無いね。僕が紗枝にかかりっきりだから寂しい思いをさせてるのかな」

 まだ私と鮎川さんの間に交わされた言葉を一切知らない光一さんが心配そうにそんな事を言う。

「ううん、鮎川さんの看病をするのは当たり前の事だし。そんな事で落ち込んでやしないから大丈夫。ちょっと風邪ぎみなのかな、体調が悪いだけ」

 私はそう言って、自分が今抱えている悩みを全て隠した。

 私は光一さんが一番苦しまない道を選びたい。

 彼を愛してるから。
 
 心から愛してしまった人だから…………。
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