抹茶モンブラン
 これは何度も鈴音には伝えてあった。
 当然彼女も僕の事を理解してくれていると思っていたし、以前のように不必要なほど彼女を疑ったりする事も無くなっていた。

 なのに……ある日僕は唐突に、鈴音から死刑宣告とも言える言葉を聞かされた。

「私、光一さんとは、もうお付き合いを続けられないと思うの……」

 無表情で抑揚のないトーンの鈴音の声。
 僕は言われた台詞をすぐに飲み込めなくて、返事をするまで少し時間がかかった。

 紗枝の世話で会えない日が多くなっていたのは事実だが、こんな唐突に別れ話を出されるほど関係が悪化していたとは思えない。

 いったい何があったっていうんだ。

「納得いかない。何が原因なの?」
 
 もちろん僕はこんな突然の別れを承諾する気は無くて、何とか鈴音の不安の原因を取り除いてやろうと思った。
 でも、鈴音の瞳に不安は見えなかった。
 ただ漠然とした悲しみのようなものはうかがえた。

「光一さんには内緒にしてたんだけど、私……田舎でお見合いしたのよ」
「……え?」

 初耳だ……というか、どうしてお見合いなんかする必要があるのかすら分からない。
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