抹茶モンブラン
3.鈴音の決意(SIDE鈴音)
SIDE鈴音
久しぶりに戻った故郷には、まだ雪が残っていた。
迎えに出てくれた父の車に乗って、私はそのままお見合い相手がいるという料亭まで連れて行かれた。
「急にお見合いをしてもいいとか言うから母さんも驚いていたぞ?」
久しぶりに会う娘との会話に少し困ったようにしていた父がそう口を開いた。
もう定年して、趣味の山登りをしているという父の顔は雪焼けして真っ黒だった。
「もう私も年齢的にのん気にしてられないし。母さんの言う事もあながち嘘じゃないなあって思ったの」
私は適当にそんな言葉を口にしていた。
死ぬほど好きな人と別れる覚悟で来たなんて、両親とも夢にも思わないだろう。
私が傍に住んでくれるかもしれないという可能性を感じて、父がどことなく嬉しそうなのを見ると、私はここに戻って来てもいいかな……という気分にすらなっていた。
「お相手は実は今転勤で埼玉にいるんだ。だから、本当は東京で見合いにしても良かったんだが、相手の方のご両親がどうしても東京に出るのは嫌だというんでね……結局こっちで見合いの席を用意したよ」
「そうなんだ」
父の声をぼんやり遠くに聞いて、私は今から会う人に対しては何も期待していなかった。
光一さんを忘れられるなら……という極めて不真面目な考えでここに来た。
久しぶりに戻った故郷には、まだ雪が残っていた。
迎えに出てくれた父の車に乗って、私はそのままお見合い相手がいるという料亭まで連れて行かれた。
「急にお見合いをしてもいいとか言うから母さんも驚いていたぞ?」
久しぶりに会う娘との会話に少し困ったようにしていた父がそう口を開いた。
もう定年して、趣味の山登りをしているという父の顔は雪焼けして真っ黒だった。
「もう私も年齢的にのん気にしてられないし。母さんの言う事もあながち嘘じゃないなあって思ったの」
私は適当にそんな言葉を口にしていた。
死ぬほど好きな人と別れる覚悟で来たなんて、両親とも夢にも思わないだろう。
私が傍に住んでくれるかもしれないという可能性を感じて、父がどことなく嬉しそうなのを見ると、私はここに戻って来てもいいかな……という気分にすらなっていた。
「お相手は実は今転勤で埼玉にいるんだ。だから、本当は東京で見合いにしても良かったんだが、相手の方のご両親がどうしても東京に出るのは嫌だというんでね……結局こっちで見合いの席を用意したよ」
「そうなんだ」
父の声をぼんやり遠くに聞いて、私は今から会う人に対しては何も期待していなかった。
光一さんを忘れられるなら……という極めて不真面目な考えでここに来た。