抹茶モンブラン
「そこ笑うところじゃないですよ」
「すみません、何か小山内さんの話し方が高校生みたいだなと思って」
「そうですか?」

 実際彼の話し方にはどこか軽やかな響きがある。
 きっと自由奔放に育ってきたんだろうなっていう感じがして、物事を明るい方向に考えようとする雰囲気を持っている。

「俺はあと1年は埼玉にいる予定ですし。東京でまた会えますよね。結婚は別にしなくてもいいですから、少し俺みたいな男もいるんだって知ってもらえたらいいと思ってるんですけど」

 いきなり「結婚前提に」とか言われると、実は息苦しいだろうなと思っていた。
 でも、小山内さんは全くそういう無理強いをする様子は無く、嫌になったら離れてくれていいよというフリーな態度をとった。

「あ、でも親には一応付き合ってるって嘘でもいいんで言っといて下さい。この縁談が駄目になったら、すぐに次のを用意してるみたいなんですよ。それもうっとおしいんで、いいですか?」

 こんな軽くお願いをされると、特に「嫌です」と断る理由も見つけられなくて、私は彼の言う通りこのお見合いは一応成功して、それなりに連絡をとりあう事になった……という報告をする事にした。

 あまりにも力が抜けるようなお見合いになった為、私は緊張していた心がドッとゆるんでしまった。
 
 その晩は、お見合いがうまくいったと聞いて喜ぶ両親と一緒に夕飯を食べて久しぶりの実家で眠りについた。
 小山内さんとの結婚が無くなったら、親が相当ガッカリするだろうなと思うと心が痛かったけれど、こればっかりはこの先の流れでどうなるのか全く分からない。
 私と同じように前の彼女の幻影を取り払うように私と見合いをしたふうな小山内さんの心を考えると、実は心境は私と彼は一緒だったのかもしれない。

 似た者同士、恋人にならなくても……気の合う友達になれそうな感じがしていた。
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