抹茶モンブラン
 こんな予想外のお見合いを終えて、私は光一さんに感情を出さないよう強引に自分を抑圧したまま別れの言葉を告げた。
 もちろん小山内さんと駄目になったとしても、私は彼と別れる道を選ぶつもりだ。
 鮎川さんの気持ちをまだ知らない光一さんにとっては、私の言葉は「寝耳に水」だっただろう。
 納得できないと言われ、結局別れを承諾してもらえないままになった。

 仕事はすぐに次のものを見つけるのは困難だったから、苦しいけれど光一さんの下で働きながら公務員試験を受ける為の勉強を始めていた。
 職歴が浅くても就ける仕事を考えたら、公務員くらいしかなかった。
 将来ずっと独りで生きなければならないかもしれない私にとって、仕事は重要なものになる。
 だから、私は光一さんとの中途半端な関係に揺れる気持ちを誤魔化す為に勉強に没頭した。

 人は、好きな人を好きなまま手放す時、どうやったら自分を抑制して生きていられるんだろう。
 大人になるというのは、こういう説明できないほどの痛みをたくさん抱えるという事なんだろうか。そして、その痛みを外に悟られないように強くいきていくのが……正しい道なんだろうか。

 答えの出ない問題を考えながら、私はいつの間にか薬を必要としていない自分に気が付いた。
 誰にも甘えられない、自分独りで立って生きなければと思った頃から私は薬を飲むのを忘れるようになった。勉強で疲れ果てるから、夜も何も考えずに寝る事が出来た。
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