抹茶モンブラン
「ええ。順調に勝ち進めていても、”ツキ”が落ちると嘘みたいに脱落する。で、気が付くと丸裸だったりして。しかも付き合い始めとか夢中な時はそういう危険性は全く見えないんですよ。ある日唐突に思いもかけない事で全てがパー……」

 両手をパーの仕草を見せて、おどけてみせる。
 極端な考えだなと思ったけれど、まるっきり外れているわけでもないから、私も笑ったりできなくて黙っていた。

「一人で生きるのが気楽でいい……って思ったばかりなんですけどね。何で鈴音さんみたいな人に出会ってしまったんだろう。しかもどうも俺はすでに分が悪いらしい気配はとっくに感じてるんですよ……この察知の鋭さもあんまりいい財産とは思えないですね」

 答えに困る言葉で、私もどうしていいか分からなくなって、冷たいコップをずっといじっていた。

「昔話するのは恥ずかしいんですが、どうせだから言ってしまいますけど……振られた彼女とはもう結婚秒読みって感じだったんですよ。でも、俺があまりにも察知がいいもんで、浮気してるのがすぐバレて……。彼女は結婚前に別の男がどういう感じか少し知りたかっただけだと言ってました。23歳で、まだほとんど恋愛経験の無い子でしたからね」

「そうなんですか……」

 小山内さんの話を聞きながら、私は俊哉を思い出した。
 彼も私以外の女性がどんなかすごく興味があったみたいだ。でも、私は鈍かったから彼から別れを切り出されるまで気付かなかった。

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