抹茶モンブラン
「あのまま鈍感に何も気付かなければ、今頃俺は結婚してましたね。そう考えると人生って不思議だなあと思います。一瞬一瞬を後悔無く過ごさないと明日はどうなるかまるっきり分からないですから」

 ビールも4杯目で、すっかり酔った様子の小山内さんは人生の不可解さを私に語り続けている。

「でもね、“結婚”っていうのは別なのかもしれないですけど。“恋“は本当に意地が悪いですよね」

「どういう意味ですか?」

「鈴音さんを少しずつ知るにつれて、俺はあなたにどうしようもなく惹かれているんです。あなたは多分全く俺の事なんか見てないって分かっているのに……勝手に心があなたに会いたいと言うんです」

 もしかしたら、似た境遇を経てきた私達の間には何か通じるものがあったのかもしれない。
 それを小山内さんは”恋愛感情”だと思っていて、私は”友情”だと思っている。
 この違いは訂正しようとしても、なかなか難しい。
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