抹茶モンブラン
「じゃあ、キスくらいならどうですか?」

 優しくそう言ってくれた小山内さんの顔を見ると、彼の大きめな黒い瞳がライトでキラキラ光っていた。
 彼自身は紳士じゃないと言っていたけど、私が嫌だと言えばキスもしないで帰ろうと言うに違いないというのは何となく分かった。

 少し考えてから、私は無言のままコクンと頷いて彼のキスを受ける事を承諾した。

「そんなに固くならないでください……本当に嫌ならすぐ止めますからね」

 ガチガチの私の肩を抱いて、小山内さんはそっと私を仰向けに寝かせる。

「……俺はこういうの、本気で好きな人にしかしませんから」

 真剣な眼差しを向け、彼はそんな事をつぶやいた。

 そっと唇を寄せられて、キスの感触が脳に伝わる。
 光一さんとのキスは、とろりと甘くとける感じだ。
 なのに、小山内さんとのキスは完全に別の人間の唇だと分かってしまう違和感を感じた。

 次の瞬間、私の体全体が「違う!」という信号を発信させた。

「待ってください!」

 私はそう叫んで、ベッドからガバッと起き上がった。

「鈴音さん……」
「ごめんなさい。やっぱり駄目。駄目です」

 そう言って、小刻みに震える自分の体をぎゅっと抱きしめた。
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