抹茶モンブラン
 小山内さんはそれ以上何かしてくるという事も無く、落ち着く為に冷たいペットボトルの水を一本買ってくれた。

「もう何もしませんから、すぐにここを出ましょう」

 カラカラの口と喉を水で潤し、私はあと少しで泣いてしまいそうだった

「……ごめんなさい」
「あなたが謝るような事は何もありませんよ。好きな人と可能な限り近くいたいって、
俺が勝手に思いを強めてしまっただけです……」

 そう言って、小山内さんは全く私を責める様子無く、優しい顔をした。

 好きな人とは可能な限り近くにいたい。
 当然の事だ。
 小山内さんを嫌いな訳では無い。でも、さっきの自分の反応を考えると、多分異性として受け入れる事は出来ないみたいだ。

「落ち着きましたか?じゃあ……帰りましょう」

 ようやく私の震えが止まったのを確認して、小山内さんは私を優しく立ち上がらせてくれた。

 ごめんなさい。

 私は心でもう一度彼に謝った。
 小山内さんは本当に私に好意を持ってくれていて、お見合いしたせっかくの縁を大事にしようと言ってくれていたのだ。
 なのに……私は、彼の心を利用して光一さんを忘れようとしていた。

 外に出て解放感のある世界に戻れた事で、無意識に心がホッとしていた。
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