抹茶モンブラン
「少し考えさせて。僕の中でも整理しないと、冷静に状態を把握できない」

 そう言って、一度私に背中を向けた光一さん。
 あまりに寂しそうなその背中に、私は抱きついてしまいそうだった。

「鈴音」

 もう一度振り返って私を見る。
 そして再び私を自分の胸に抱きかかえ、震える声で言った。

「僕は……君だけを愛してる。……愛してるんだよ」
「……」

 何か言葉を口にしたら、私は号泣してしまう。
 それが分かっていたから、私は彼の腕の中でじっと泣くのを耐えていた。

 数分そのまま私達は抱きあっていたけれど、ふいに光一さんは私をドアの方へ押し出すように体を離し、そのまま寒い風に当たりながら歩いて暗い道路の向こうへ消えて行ってしまった。
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