抹茶モンブラン
 男は泣くものじゃ無いと小さい頃から叩かれて育った。
 本当は弱虫でいつでも泣いてしまいそうな弱い僕を「男」にしようと、両親も必死だったんだろう。
 叩かれた頬は痛かったけれど、叩いた母の顔が泣きそうだったのが余計悲しくて、僕は涙をこらえた。
 僕が弱いと母が悲しむ。
 強く、優しい男にならないと……。
 本来の弱い自分を誤魔化しながら育った結果が、こういう中途半端な今の僕だ。

 外に対する強がりとは逆に、どこか甘えられる存在を強く求めていて……。
 そんな僕の甘えを受け入れてくれたのが、鈴音だった。
 紗枝の前ではいつでも僕は年上の兄という立場を崩せない。
 僕が紗枝に対して抱く感情は「兄妹愛」の何ものでもない。

 どうすればいいんだ、僕は……。
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