抹茶モンブラン
「鈴音さんもあなたも……本当にお人よし過ぎるわ……。私は罪悪感の塊で今まで過ごしてきた。堤さんを失いたくなくて、悪魔になってでもあなたをつなぎ止めていたかった。でも、もう自分を解放したい……本当は、こうやって堤さんからハッキリNOという言葉を聞くのを待っていたのかもしれない」

 そう呟き、紗枝は車椅子に戻ってホウッと一つため息をついた。
 何か、重い荷物を背中から降ろしたような安堵の表情を見せていて、僕は紗枝がこれから未来をしっかり歩く決心をしたんだと理解した。

 彼女はもう少し東京でリハビリをして、歩けるようになったら鹿児島に帰るつもりだと言った。

「東京の空気に憧れて来たけど、堤さんがいるという事以外、私にはあまり楽しい事がなかった。やっぱり生まれ故郷の土の上で生きるのが私には向いてるみたい」

 ずっと子供のように幼く見えていた紗枝の顔が、一人の成熟した女性の顔に見えた。
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