抹茶モンブラン
「光一さん……」
いつも私達が座っていた指定席とも言える二人がけ用のテーブルに、光一さんが座っているのが見えた。
仕事虫の彼が、本も書類も見ないでただボーっとコーヒーカップをいじりながら座っている。
その姿を見て、私は何も考えず店に向かって走り出していた。
どんなシチュエーションで、どんな言葉を交わすとしても、一瞬でも彼の近くにいられる事が私には何よりも嬉しい事なのだと気付いた。
今から何を語られるのか分からなかったけど、私は彼と会えるだけで自然に嬉しい気持ちになってしまうのだった。
息を切らせてお店に入った私に気付いた光一さんは、すぐに席を立って私の方へ歩いて来た。
お互い職場では顔を合わせているのに、こうやってオフの顔を見るのはあの別れ話をした日以来で、何だかその場で私は泣いてしまいそうだった。
「外に出ようか」
光一さんは優しくそう言って、私の背中に軽く手を当てた。
店の外は人通りも少なく、車が時々走りすぎる音だけ耳に届く。
初夏が近くなって、気温は緩くなってきっていたけれど、この日の夜風は冷たかった。
「鮎川さんの新しいアパートへ行っていたの?」
私がそう言うと、光一さんは「うん」と一言答えたきり黙っている。
どこへ向かっているのか、何か目指すところがあるような足取りで彼は私の少し斜め前を歩いていた。
いつも私達が座っていた指定席とも言える二人がけ用のテーブルに、光一さんが座っているのが見えた。
仕事虫の彼が、本も書類も見ないでただボーっとコーヒーカップをいじりながら座っている。
その姿を見て、私は何も考えず店に向かって走り出していた。
どんなシチュエーションで、どんな言葉を交わすとしても、一瞬でも彼の近くにいられる事が私には何よりも嬉しい事なのだと気付いた。
今から何を語られるのか分からなかったけど、私は彼と会えるだけで自然に嬉しい気持ちになってしまうのだった。
息を切らせてお店に入った私に気付いた光一さんは、すぐに席を立って私の方へ歩いて来た。
お互い職場では顔を合わせているのに、こうやってオフの顔を見るのはあの別れ話をした日以来で、何だかその場で私は泣いてしまいそうだった。
「外に出ようか」
光一さんは優しくそう言って、私の背中に軽く手を当てた。
店の外は人通りも少なく、車が時々走りすぎる音だけ耳に届く。
初夏が近くなって、気温は緩くなってきっていたけれど、この日の夜風は冷たかった。
「鮎川さんの新しいアパートへ行っていたの?」
私がそう言うと、光一さんは「うん」と一言答えたきり黙っている。
どこへ向かっているのか、何か目指すところがあるような足取りで彼は私の少し斜め前を歩いていた。