抹茶モンブラン
 1年前と同じ海ほたるの夜景。
 やっぱり何度見ても綺麗。
 あの日より今日は若干風が弱く、海の水面も静かだ。

「鈴音」

 今まで冗談なんか言ってずっと笑っていた光一さんが、急に真面目な声で私の名前を呼んだ。

「……どうしたの?」

 彼の方を向くと、光一さんはちょっと言いにくそうに下を向いている。

「あのさ、こういうのどう言っていいのか分からないけど。…………僕と一緒にずっといてくれる?」

 子供がお母さんの手を握るみたいに、彼は左手で私の手をぎゅっと握った。

「当たり前でしょ?私は光一さん以外とはもう無理なんだから」

 そう答えると、彼は嬉しそうな顔をして、もう片方の手に小さな箱をのせて差し出した。
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