抹茶モンブラン
 言葉なんか一度も交わした事の無い人だ。
 彼を励ましていた覚えも無い。
 そんな人が、どうして私の存在を特別だなんて思えるんだろう。

 私の心の中は、猜疑心でいっぱいだ。

「私、そんなふうに思われる価値ありませんよ」
「自分の価値って自分で決めるものなの?」
「いえ、そういうんじゃないですけど……」

 堤さんの言葉を素直に受け取れない。
 私の本来の姿を何か別のものと見間違ってるんじゃないかって気がする。

 心のどこかで、堤さんも私を前夫と同じ種類の人間なんじゃないかと勘ぐっていた。
 最初はいい顔をして私の事を必要だなんて言っておいて、時間が経つと別の若い女性に気持ちが流れる。
 私はそういう男性に目をつけられるタイプなんだろうか。

 何十年も先の未来を一緒に歩ける人ってこの世に本当にいるんだろうか。

 親以外の他人に、心から愛されるってどういう感じなんだろう。

 私は本気で誰かを愛してきただろうか。

 様々な疑問が沸いては消えていく。
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