抹茶モンブラン
唇が近付くまで、随分長い時間がかかった気がする。

お互いの瞳を見つめながら、少しずつ近付く。
あと数センチという距離になって、自然に目を閉じた。
すると、ふわっとした彼の唇が触れる。
思わずそのキスをきちんと受け止める為に、私は自分で顔の角度を少し変えた。

「……甘い。キスが甘いって感じたの初めてだよ」

唇を離して、堤さんはそんな言葉をつぶやいた。

「そうですか?さっきクッキー食べたせいかな」

私がそう言ったら、彼はクスッと笑った。
そのまままた目をつむって、次々に送られてくるキスの刺激に酔いしれた。

大人になったつもりでいたけれど、私は誰かに愛されたくて……ずっと心細かった。
堤さんと居ると、独りで生きるのはやっぱり寂しいって思っていた自分の本心に気付かされる。

プールで体力づくりをしているという堤さんの胸板は厚くて、頬を寄せると何だかすごく大きな人に抱かれてるみたいで安心する。

「過去の事……聞かないんですね」

私は、自分の過去を全く探って来ない彼に多少不思議な気持ちがしていた。
どうでもいいと思っているわけじゃないんだろうけど……。
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