抹茶モンブラン

3. 焼きもち

 職場での私の仕事は相変わらず淡々としたものだった。
 特に難しい注文をつけられる事はなくて、最初難しいと思っていた画像処理も慣れてくるとそれほど大変ではなくなった。
 決まった作業を繰り返すうちに、自分でも簡単なプログラムくらいは組めるようになっていた。
 それを実際の仕事に活用させるまではいかなかったけれど、自分のプログラムで画像がパッと現れたりすると、単純に嬉しかった。

 そんなある日、堤さんの共同研究者になる高田祐二(こうだゆうじ)さんという私と同い年の若い研究員が入って来た。
 体は大きいけれど、柔和な顔立ちをしており、私が「よろしくお願いします」と言うと、優しそうに微笑んで「こちらこそ」と答えた。
 イギリスで生まれ育った彼は、英語がネイティブだった。
 それでもご両親が日本人だというのもあって、日本語もかなり上手に使うことが出来ていた。

「高田には僕の仕事をいくつか分担してもらって、共同研究をする。彼からの頼まれ事も出てくると思うから、よろしく頼むよ」

 堤さんからそう言われ、私は素直にハイと答えた。

 外出の多い堤さんに代わって、留守の間は高田さんと二人きりになる事が多くなった。

 お弁当を作るのに、毎日堤さんにメールで“明日はお昼必要ですか”というメールをする。
 彼はそのメールに簡単に必要かどうかを答えてくる。
 でも、高田さんが入ってからというもの、何故か直接携帯に電話が入るようになった。
< 49 / 234 >

この作品をシェア

pagetop