抹茶モンブラン
「ああ、それって嫉妬じゃない?」

 ほとんど相談事をしない私が、多少プライベートな事を話せる相手は、大学時代の親友、坂井久美(さかいくみ)だ。
 彼女は私と違って、社会スキルを相当高く身につけていて、2度の転職の後、ずっと夢だと言っていたデザイナーになった。
 私の離婚の時は親身になって心配してくれて、それ以来一応自分の状況報告は定期的に彼女に打ち明けている。

「嫉妬……。職場での関係なんてそうそう縮まりっこないんだけど、やっぱり二人きりだっていう環境だから心配になっちゃうのかな」

 久しぶりの女友達との買い物で気分が晴れて、私は自分の恋愛をついつい深く語ってしまっていた。

 堤さんが高田さんとの事で焼きもちを妬いているなんて、あの人のキャラクターを考えるとあり得ない気もするんだけれど。
 久美にそう言われると、そうなのかな……なんて思ったりする。

 私は好きになった人の事は基本的に必要以上に疑いたくないと思うタイプで、盲目的に信用してしまう性格だ。
 前夫に裏切られたという過去を背負っていてすら、今、堤さんを疑う気持ちなんてほとんど無い。
 それは愛情が薄いからなのかと言われると、“違う”と答える自信がある。
 好きだという気持ちに正直になりたいだけだ。
 これを言うと久美は「嘘つき」って言うんだけど……事実だから仕方ない。
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