抹茶モンブラン
「好きな男を多少なりとも疑わないなんて、おかしいよ」
「そうかな。ありもしない事実を作り上げて不安になってても際限ないじゃない」
「ふーん……そうか、鈴は疑って不安が広がるのが怖いから見ないようにしてるんだ」

 そうだろうか。

 ハッキリ言って私は、周りが言うほど精神的に強い方では無い。
 堤さんにはバレてしまったけど、こんなに近い友人にすら心が不安定な事や治療を受けている事は告白していない。
 それが分かっているから、必要以上に暗い方向に心が向くのを本能的に止めているのかもしれないな……そんな風に思ったりした。

「あ、そういえば舞が結婚決まったんだって」

 同じ大学だった舞ちゃんとは、ちょっとした心のすれ違いで今は連絡をとりあっていない。
 それを久美は分かっているんだけれど、橋渡しみたいに私に舞ちゃんの事を定期的に知らせてくれる。
 きっと私の情報も彼女に伝わっているに違いない。

「え、そうなんだ。ずっと連絡とってなかったから……、じゃあ、あの長いこと付き合ってた彼と?」
「うん。同棲が随分長く続いていたみたいだけど、子供が出来たみたいで。入籍だけだって」
「へー……。良かったね、きっかけが欲しいみたいな事言ってたもんね」

 私は純粋に彼女が幸せになってくれる事を願って、その報告を聞いた。
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