抹茶モンブラン
「ごめんなさい。来週の約束だと思ってました!」

 私が青ざめて何度も頭を下げていると、彼の長い腕がすっと窓から伸びてきて、私の腕をつかんだ。

「え?」
「乗って。これからでも時間あるでしょ?」

 有無を言わせない迫力でそう言われて、私は大人しく荷物を後部座席に置かせてもらって、彼の隣に座った。
 無表情の堤さんがエンジンをかけて、エアコンの調整をしながら車を発進させる。

「あの……何時からあそこに?」

 約束したのは昼の12時だ。
 まさか、その時からいた訳じゃないよね……。不安になる。

「僕もあの暑い中、昼間から車の中で待つ気力は無いよ。何も連絡が無いから心配はしたけど、多分君が約束した日を間違えたんだろうなって思ってさ」

 静かなもの言いで、特に怒っているような様子は見えなかった。
 ただ、彼の中で消化出来ない気持ちが渦巻いているような感じは伝わってきた。

「そうでしたか……すみません」

「帰って来そうな5時くらいからあそこにいた。携帯に催促の電話したって慌てさせるだけだし。良かったよ……本気で何かあったのかと思って、あと少しで駐車場を動くところだった」

 携帯に連絡をくれれば、すぐに対処できたのに。
 こういうところが、ちょっと変わった人だなあと思う。

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