抹茶モンブラン
「さあ……自分でも良く分からない状態でハンドル握ってるからね。どこに行こうか」

 目的も無く車を走らせるっていうのは、ある意味ただ走らせる事でストレスを分散させようとする行動に見える。

「戻りましょう。私のアパートでもいいし、ちゃんと部屋でお話しましょうよ」

 私は彼の様子が怖くなってそう言った。
 すると、堤さんは目線は前を向いたまま黙っていた。

「……今日はちょっと抑えが利かない気がする」

 数十秒続いた沈黙の後、彼はそうつぶやいた。

「え?」
「言ったよね。キスしたらそこから先もきっと求めてしまうって……。出来るだけそういう欲求は見せないでいたかったけど、今日はどうにもならない。車を走らせていれば多少気持ちが紛れるから、こうしてるけど……」

「……」
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