抹茶モンブラン
「僕はこれで帰るから。鈴音は普通にベッドで寝たほうがいい」

 そう言って、光一さんはヨロヨロとまだすっかり目覚めてない足取りで帰ろうとした。

「待って、帰らないで!」

 私はとっさに、進めようとした彼の足を止めた。

「鈴音?」
「嫌、一人にしないで……こんな真夜中に一人にされるの嫌なの」

 私は静かな夜に一人になるのが嫌で、睡眠が深くなる工夫をいつもしているぐらい夜中に起きるのを嫌っている。
 今光一さんに置いて行かれたら、私は多分朝まで一睡も出来ないで起きているに違いない。

「だって……」

 光一さんが思い詰めた目で私を見る。

「いいですよ、私……光一さんが好き。好きなんです」
「……」

 私の必死な足止めで、彼はとうとう帰るのを諦めたみたいだった。
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