sostenuto【完結】
びっくりして固まっていると、その闖入者は頭を掻きながら真っ直ぐにこちらに向かってきた。
「すんません!窓ガラス割ったの俺です。怪我とかしてないですか⁉」
「あ、うん。大丈夫」
彼の勢いに飲まれるように答えると、その彼はホッとしたように笑った。
「良かったぁー!あ、俺サッカー部2年の浅生って言います。3年の水瀬先輩ですよね?」
屈託のない笑顔に思わず見惚れていると、彼は予想外のことを言ってきた。
「私を、知ってるの?」
私はそんなに目立つ存在じゃない。どちらかと言えば地味で目立たない。
だから、彼ー浅生君が私の名前を知っていることに酷く驚いた。
そんな気持ちが顔に出てしまったのか、浅生君が少し跋の悪そうな顔で、頬を人差し指で掻いた。