sostenuto【完結】
「そっか。邪魔してないなら良かった。ところで浅生君。窓ガラスのこと先生に報告しなくていいの?」
「あ。……参ったなぁ。ってか、どの先生に言えばいいのかなぁ?」
「とりあえず、顧問の先生でいいんじゃない?」
「…顧問。うわぁ…怖い」
頭を抱えてその場に蹲る浅生君に、私は思わず笑ってしまった。
「ちょ…!笑うとこじゃないですよ!サッカー部の顧問って宮内先生なんですから!」
宮内先生は、この学校の先生の中でも一際厳しい先生で、生徒指導担当でもある。
悪い先生ではないけど、私も少し苦手だったりする。
「一緒に行こうか?」
浅生君の気持ちもわかるので、そう言えば、彼は頭を横に振った。
「俺のミスなんで、先輩を巻き込めません。…先輩って、やっぱり優しい人なんですね」
やっぱり?どういうことだろ? と、私が首を傾げると、浅生君は私が見惚れた、あの屈託の無い笑顔を見せてくれた。