sostenuto【完結】

えっと……?


こういう時、なんて答えたら良いのかな?
恋愛経験なんて皆無な私には、ハードルが高過ぎる気がする。


答えに困っていると、浅生君が苦笑した。


「俺、浅生優也って言います。優也って呼んで下さい。その代わり、俺もこれから先輩のこと歌音(かのん)先輩って呼びます」
「えっ…」


これまで後輩に知り合いなんていなくて、初めて出来た後輩の知り合いが男の子で。


初めて尽くしに私は戸惑うばかりだったのに、浅生君は全く気にしてない様子で。


「ね、歌音先輩。俺のこと、名前で呼んでみてよ」


浅生君からさっきまでの爽やかさが薄れて、なんか急に艶が増したような表情が現れて、酷く戸惑う。


「えっと…あの…」
「優也。優也って呼んでよ」
「あ……」
「早く」


物理的な距離は十分にあるはずなのに、浅生君の声がとても近いものに感じて、私の顔は自分でも分かるほど、紅くなった。

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