神のでサンティアゴ
ナイトミサがありますので、ぜひ参加して下さい」
「はい」
真一は7時からのミサにも出る積もりはなかった。キリスト教のミサに参加しても意味が分からないからだ。
「朝食は6時からです。しっかり食べて朝は元気に出発してください。その時に道中で飲む水み忘れずに汲んでいってください」
水はもちろん水道水である。
こんな山の中、売店も食堂もないのだ。
巡礼宿が水と食事を提供してくれなれば、水を買うどころか食事はできない。
8時から夕食が始まった。
「さあ、いただきましょう」
「頂きます」
豆とソーセージのスープだ。
フランスパンと一緒に食べた。
「うまい」
20キロ以上も山道を歩いているだけに、空腹だった。
赤ワインも付いている。
陶器のカップにワインが注がれた。
「サルー」乾杯の意味。
多分安ワインなんだろうが美味しい。日本では2000円以上はするワイン並みの味だ。
後で厨房を覗くと4リットルペットボトル入りで2ユーロくらいのワインだった。
アルコールが入ると話しが弾む。
「ありがとう」日本語だった。
「えっ日本語が話せるのですか」
「ありがとう」
ありがとうしか話せないのだ。それでも、こんな場所で日本語が聞けるのは嬉しい。
「アミーゴ」
テーブルの向こうこらアミーゴと叫んで乾杯された。
アミーゴの意味も分からずに、こちらもアミーゴと言い返す。
でも、なんだか愉快だ。
みんな笑いながら食事をしている。楽しい雰囲気が続く。
ワインを3杯飲んだ。
身体の芯から陽気になった。
野菜サラダが運ばれてきた。
数個入っているオリーブの実がなんともスペインらしい。
大鍋に沢山あったスープが全て食べ尽くされた時に。
「デザートです」
えっこんな山中の宿でアイスクリームが食べられるとは思ってもみなかった。
2センチくらいの厚さに切られた5センチ角のアイスを2枚のビスケットで挟んである。こんな調理方法もあったのだ。
「デザート・デザート・デザート・・・・・・・・・」
巡礼者は思いがけないサービスに、デザートコールが始まった。
食事が終わるとみんなで後片付けである。
分担して作業が始まった。
ヨーロッパ人男性は家庭でも皿洗いに慣れているのだろう。
みんな手際がいい。
洗い終わると、皿は丁寧にタオルで水気を拭き棚に並べられてゆく、鍋の底はピカピカに磨かれた。
もう9時である。ナイトミサの時間だが失礼して、2段ベッドの上段に上がり、持参している寝袋に早々にもぐり込んだ。
翌朝も暗いうちから起き出して歩き始めた。
同宿だった巡礼者に次々と追い抜かれてゆく、日本人は足が遅いのか? いや普通と思うが、白人の歩幅とあの健脚には付いて行けない。
自分のペースで歩く事にしている。
「オラ」こんにちはの意味。
「オラ ブエンカミノ」こんにちはよい旅をの意味。
巡礼者同士の気持ちの良い挨拶が交わされる。
「足が痛いんです」若い白人女性である。
「どうしました」英語だった。
真一は仕事がら英語は堪能だ。
「杖を使うと楽ですか」
出発時に購入した登山用のストックを1本使っていた。
2本使っている人もいるが。歩調は早くなるが見た目が前傾姿勢となり見醜くなる。巡礼は背筋を伸ばして優雅に歩きたい。
こだわりがあった。
「杖があると膝の負担が随分とちがいますョ」
「そうですか」
「ちょっと待ってて下さい」
真一は巡礼路脇に踏み入り適当な枝を1本見付け、急場の杖をこしらえて渡した。
「ありがとございます」
「どうぞ使って見てください。その辺の枝ですから使いにくいとは思いますが無いよりはマシでしょう」
「いいえ、本当にありがとうございます」
足が痛そうである。
真一の歩くスピードに付いて来れずに、直ぐに離れてしまった。少しだけ良い事をして嬉しい気分となって先へ進んだ。
若い女性に付きまとうのは潔くない。1人にしてやった方がいい。
しばらく歩くと森の巡礼路に、すらりと伸びた杖にちょうどよい木があった。
さっき若い女性に取ってあげた物より、丁度よい長さと太さである。
後ろを振る返ったが、若い女性の姿は見えない。
足が痛いんで休んでいるのかもしれない。ここで待っていては日本男児として醜い。下心が見透かされそうだ。
ヨーロッパ人の男性ならば待つどころか、その杖を持って女性の元へ歩き届けるだろう。執拗なまでの異性に対する優しさがあるが。日本人には真似できない。
その杖を取ろうか迷った。
いくらこちらが良いのが見つかっても2本もいらない。取るのは止めて歩き始めた。
しかし、10メートルくらい歩いたのだがどうも気になる。あの枝を取っておこうと思い戻った。
宿にチェックインした。
今日は2段ベッドの下段が取れた。受付の時に若い人を上段に回すようだ。
真一の年齢で疲れた顔をしてチェックインすると下段に回してくれる確率が高い事を経験で知っていた。
早速、ザックを降ろして寝袋をベッドに広げた。
ベッドにはマットレスはあるものの、シーツも毛布も何も無いのだ。その他のものは持参しなければならない。
空気枕と寝袋は最低限必要だ。
寝袋は布団代わりだが。シーツとしての役割もしている。
マットレスが汚いからではない。その逆で巡礼者自身の汗でマットレスを汚さない為である。
シャワーに直行した。
オッと!ここのシャワーにはドアがない。男女別にはなっているが、更衣室もなく全員裸の付き合いだ。
日本の銭湯を思えば恥ずかしさはない。
なに、なに、、ヨーロッパ人男性は包茎。みんな皮かぶり。
そう言えばギリシャ神殿の彫刻男性も包茎だった。
次は洗濯だ。下着と靴下を固形石鹸でゴシゴシと擦り洗う。
陶器製シンクには洗濯板状の波型が付いている。
ヨーロッパでも洗濯板を使用していたのだ。
日本の専売品ではなかった。
午後の日差しは強い。
2~3時間も太陽に当てると洗濯物はカラカラに乾く、湿度40%殆ど雨が降らないスペインだからだ。
ここまでが宿に到着してからやるべき重要な仕事である。
その後はビールを飲む?
真一はビールより、美味しくて安いワインが好きだ。
昼食を取りながらワインを飲もうと出かけようとした。その時に
「はい」
真一は7時からのミサにも出る積もりはなかった。キリスト教のミサに参加しても意味が分からないからだ。
「朝食は6時からです。しっかり食べて朝は元気に出発してください。その時に道中で飲む水み忘れずに汲んでいってください」
水はもちろん水道水である。
こんな山の中、売店も食堂もないのだ。
巡礼宿が水と食事を提供してくれなれば、水を買うどころか食事はできない。
8時から夕食が始まった。
「さあ、いただきましょう」
「頂きます」
豆とソーセージのスープだ。
フランスパンと一緒に食べた。
「うまい」
20キロ以上も山道を歩いているだけに、空腹だった。
赤ワインも付いている。
陶器のカップにワインが注がれた。
「サルー」乾杯の意味。
多分安ワインなんだろうが美味しい。日本では2000円以上はするワイン並みの味だ。
後で厨房を覗くと4リットルペットボトル入りで2ユーロくらいのワインだった。
アルコールが入ると話しが弾む。
「ありがとう」日本語だった。
「えっ日本語が話せるのですか」
「ありがとう」
ありがとうしか話せないのだ。それでも、こんな場所で日本語が聞けるのは嬉しい。
「アミーゴ」
テーブルの向こうこらアミーゴと叫んで乾杯された。
アミーゴの意味も分からずに、こちらもアミーゴと言い返す。
でも、なんだか愉快だ。
みんな笑いながら食事をしている。楽しい雰囲気が続く。
ワインを3杯飲んだ。
身体の芯から陽気になった。
野菜サラダが運ばれてきた。
数個入っているオリーブの実がなんともスペインらしい。
大鍋に沢山あったスープが全て食べ尽くされた時に。
「デザートです」
えっこんな山中の宿でアイスクリームが食べられるとは思ってもみなかった。
2センチくらいの厚さに切られた5センチ角のアイスを2枚のビスケットで挟んである。こんな調理方法もあったのだ。
「デザート・デザート・デザート・・・・・・・・・」
巡礼者は思いがけないサービスに、デザートコールが始まった。
食事が終わるとみんなで後片付けである。
分担して作業が始まった。
ヨーロッパ人男性は家庭でも皿洗いに慣れているのだろう。
みんな手際がいい。
洗い終わると、皿は丁寧にタオルで水気を拭き棚に並べられてゆく、鍋の底はピカピカに磨かれた。
もう9時である。ナイトミサの時間だが失礼して、2段ベッドの上段に上がり、持参している寝袋に早々にもぐり込んだ。
翌朝も暗いうちから起き出して歩き始めた。
同宿だった巡礼者に次々と追い抜かれてゆく、日本人は足が遅いのか? いや普通と思うが、白人の歩幅とあの健脚には付いて行けない。
自分のペースで歩く事にしている。
「オラ」こんにちはの意味。
「オラ ブエンカミノ」こんにちはよい旅をの意味。
巡礼者同士の気持ちの良い挨拶が交わされる。
「足が痛いんです」若い白人女性である。
「どうしました」英語だった。
真一は仕事がら英語は堪能だ。
「杖を使うと楽ですか」
出発時に購入した登山用のストックを1本使っていた。
2本使っている人もいるが。歩調は早くなるが見た目が前傾姿勢となり見醜くなる。巡礼は背筋を伸ばして優雅に歩きたい。
こだわりがあった。
「杖があると膝の負担が随分とちがいますョ」
「そうですか」
「ちょっと待ってて下さい」
真一は巡礼路脇に踏み入り適当な枝を1本見付け、急場の杖をこしらえて渡した。
「ありがとございます」
「どうぞ使って見てください。その辺の枝ですから使いにくいとは思いますが無いよりはマシでしょう」
「いいえ、本当にありがとうございます」
足が痛そうである。
真一の歩くスピードに付いて来れずに、直ぐに離れてしまった。少しだけ良い事をして嬉しい気分となって先へ進んだ。
若い女性に付きまとうのは潔くない。1人にしてやった方がいい。
しばらく歩くと森の巡礼路に、すらりと伸びた杖にちょうどよい木があった。
さっき若い女性に取ってあげた物より、丁度よい長さと太さである。
後ろを振る返ったが、若い女性の姿は見えない。
足が痛いんで休んでいるのかもしれない。ここで待っていては日本男児として醜い。下心が見透かされそうだ。
ヨーロッパ人の男性ならば待つどころか、その杖を持って女性の元へ歩き届けるだろう。執拗なまでの異性に対する優しさがあるが。日本人には真似できない。
その杖を取ろうか迷った。
いくらこちらが良いのが見つかっても2本もいらない。取るのは止めて歩き始めた。
しかし、10メートルくらい歩いたのだがどうも気になる。あの枝を取っておこうと思い戻った。
宿にチェックインした。
今日は2段ベッドの下段が取れた。受付の時に若い人を上段に回すようだ。
真一の年齢で疲れた顔をしてチェックインすると下段に回してくれる確率が高い事を経験で知っていた。
早速、ザックを降ろして寝袋をベッドに広げた。
ベッドにはマットレスはあるものの、シーツも毛布も何も無いのだ。その他のものは持参しなければならない。
空気枕と寝袋は最低限必要だ。
寝袋は布団代わりだが。シーツとしての役割もしている。
マットレスが汚いからではない。その逆で巡礼者自身の汗でマットレスを汚さない為である。
シャワーに直行した。
オッと!ここのシャワーにはドアがない。男女別にはなっているが、更衣室もなく全員裸の付き合いだ。
日本の銭湯を思えば恥ずかしさはない。
なに、なに、、ヨーロッパ人男性は包茎。みんな皮かぶり。
そう言えばギリシャ神殿の彫刻男性も包茎だった。
次は洗濯だ。下着と靴下を固形石鹸でゴシゴシと擦り洗う。
陶器製シンクには洗濯板状の波型が付いている。
ヨーロッパでも洗濯板を使用していたのだ。
日本の専売品ではなかった。
午後の日差しは強い。
2~3時間も太陽に当てると洗濯物はカラカラに乾く、湿度40%殆ど雨が降らないスペインだからだ。
ここまでが宿に到着してからやるべき重要な仕事である。
その後はビールを飲む?
真一はビールより、美味しくて安いワインが好きだ。
昼食を取りながらワインを飲もうと出かけようとした。その時に