『ピュアに恋して』~秘密な関係~ドリーマー
「香奈ちゃん。
その蕎麦、俺にくれる予定だった?」


 ずっと渡さず持っている香奈に
顔を傾けながら聞いてくる。



「ごめんなさい。こんなもので」



「ううん。俺、蕎麦大好きだよ。
良かったら一緒に食べない?俺茹でるよ」

 突然の春哉の申し出に面食らっていた。


「あの、でも、えっと」



「香奈ちゃん、引越しで疲れたでしょう?

俺んちで茹でて食べよう。

ここで待ってる?茹で上がるまで。


じゃあ、茹で上がったら窓から呼ぶね」



「はい。なんか、すみません」


 お辞儀すると
春哉は蕎麦を握り締め部屋へ帰って行った。


色々考えながら
ベンチに座って
クスノキの立派な枝を眺めた。



 すごいなあ。
この木。

葉の間から日差しが降ってくる。


 知らないうちに座ったまま香奈は、
うとうとしてしまった。
< 60 / 152 >

この作品をシェア

pagetop