大きな鞄
「こっちの方がいいかなぁ? あ、こっちの方がたくさん入るかな? ねぇ、裕也」
店内に並ぶたくさんの商品の中から大きな鞄を選び、美里は僕にどちらがいいかを訊ねる。
大きな鞄は、美里の未来を詰め込むための鞄。
だけど、美里の未来はきっとここにあるどの鞄にも入りきらないだろう。
それくらい、美里の夢は大きいはずだから。
結局、美里はどちらがいいかを訊いたわりには、自分でさっさと選び目的の買い物を済ませてしまった。
一緒についてきた僕は、ただ本当に一緒にいただけに終わる。
美里がレジで支払をする間、僕は少し離れた場所からその光景を見ていた。
買ったのは鞄なのに、それが更に大きな紙袋に入れられているのがなんだか滑稽に感じた。