理想の男~Magic of Love~
後は…浩治が私に愛想をつかして、婚約を解消してくれることを祈るばかりだ。

そのためには、彼と距離を置いた。

彼に言いたいことも言った。

ずっと言いたかったことを全部言って、これですっきりしたはずだ。

なのに…私の心は泣いていた。

それは、昨日からずっと私の頭の中を支配している彼のことが原因だった。

私の頭の中をずっと支配しているのは、藤だった。

「――どうして…」

呟いたとたん、また涙がこぼれた。

どうして何だろう。

どうして消えてくれないのだろう。

もう、藤のことを忘れたい。

もう、藤のことを思い出したくない。

藤のことを思うと、胸が苦しいから。

藤のことを思うと、胸が痛いから。

私は頭の中の藤から逃れるように、ベッドに行くとそこに突っ伏した。
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