理想の男~Magic of Love~
当たり前のように、その名前が出てきた。

答えられないと言うように黙っていると、
「――やっぱりな…」

私の様子に藤はやれやれと言うように、息を吐いた。

やっぱり…って、何よ。

息を吐きたいのは、私の方だ。

そう思いながら、私は息を吐いた。

それから続けて、
「いい彼女じゃない。

美人だし、“援助”までしてもらっちゃって」

「違う!」

そう言った私をさえぎるように、藤が強い口調で言った。

「何が?」

私は聞き返した。

何が違うって言うの?

「早く蘭さんのところに帰った方がいいんじゃない?」

そう言った瞬間、ズキッと胸が痛んだ。

あれ?

何で?

痛み出した胸に、私は戸惑った。
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