理想の男~Magic of Love~
男――藤が言った。

「――ふ、じ…?」

それって、名前?

それとも、名字?

…どっちなのか、よくわからないんだけど。

藤は自虐的に笑って、
「覚えるのも忘れるのも、愛莉の自由だ」

そう言った後、ベッドから離れた。

藤は落ちていた白いシャツをキレイな動作で拾いあげると、それを身につけた。

シャツを身につけた後、
「部屋代は払ってく、じゃ」

そう言って藤は、私に背中を見せた。

その後ろ姿が見えなくなったと思ったら、ドアの閉まる音が聞こえた。
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