理想の男~Magic of Love~
――男は好きな女の幸せを願う生き物だから

悲しそうに言った、その言葉と顔も一緒に頭の中に浮かんだ。

その出来事に浸っている私に、
「大事な彼女のためにも、考えた方がいいんじゃない?」

蘭さんの声が耳に入った。

声が低い女の人だなって思ってたけど、よくよく考えて見たら男だから声が低いんだよね。

そう思っている私に、
「僕も父さんも、兄貴が帰ってくるのを待ってるんだから」

蘭さんの声が続けて耳に入ってきた。

「えっ…?」

たった今蘭さんが言ったそのキーワードに、私は驚きのあまり声が出た。

今、“兄貴”って言ったよね?

つまりはえーっと、
「藤さん!」

頭が混乱し始めている私に、眼鏡の男が藤を呼んだ。
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