理想の男~Magic of Love~
私が顔をあげると、眼鏡の男が隣にいた。

眼鏡の男は右手を口元に近づけて、
「小林さんと一緒に裏にある喫茶店で待ってますから!」
と、藤に向かって言った。

えっ、えええっ?

何で私の名前知ってるの!?

もちろん、名乗った覚えもなければ言った覚えもない。

驚きのあまり目を丸くした私に、
「行きましょう」

眼鏡の男が私の腕をつかんだ。

「――えっ…あ、えっ?」

彼に腕をつかまれた私はそのまま連行されて、2人の前を去ることになった。

文字通り彼と一緒に劇場の裏にあった喫茶店へ行くと、空いていた窓際の席に腰を下ろした。

「座ってください」

眼鏡の男は私の腕を離すと、向かい側の椅子に腰を下ろした。

彼が座ったことを確認すると、私も椅子に腰を下ろした。

うーん、と…これは何ですか?

「コーヒーでいいですか?」

眼鏡の男が聞いてきた。

「…別に、いいですけど」

首を縦に振ってうなずいた私に彼は店員を呼ぶと、アイスコーヒーを2つ頼んだ。
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