理想の男~Magic of Love~
店内を見回すと、何だか懐かしい感じがした。

まるで実家に帰ってきたような、そんな気分だ。

劇場の裏に喫茶店か。

舞台を観にきたお客さんたちは、ここへくるんだろうな。

あのシーンがよかったとか、出てた役者さんがよかったとか、そんな話をするのかな。

そう思うと、何だか微笑ましくなった。

「――あの…」

耳に入ってきた眼鏡の男の声にハッと我に返った。

「はい」

返事をした私に彼は1回口を閉じた後、
「間違ってたら申し訳ありませんが…」

呟くように前ふりをした。

その後で、
「もしかして、小林愛莉さんですか?」
と、聞いてきた。
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