理想の男~Magic of Love~
思いを伝えようとした矢先に発覚した、まさかの出来事。

その日の配達がどうなったのかどうかは、自分でもよくわからなかった。

――愛莉に恋人ができた。

その日の俺はご飯を食べる元気なんてなければ、気力もなかった。

人間はショックを受けると無気力になるって言うけど、まさにその通りだと俺は実感した。

そんな俺を励ましてくれたのが、小林だった。

愛莉に話しかけた、眼鏡のあの男だ。

「藤さん、何かあったんですか?」

舞台の稽古を終えて片づけをしていた俺に、小林が話しかけてきた。

小林に連れられるまま、俺は行きつけの居酒屋に行った。

「そのうち別れちゃいますって」

居酒屋でビール片手に今までの出来事を話した俺に、小林はそう言った。

「どうせ長く続かないに決まってますよ」

小林は笑いながらビールを1口飲んだ。

ビールを5杯も飲んだせいもあってか、彼の顔は赤かった。

小林は豪快に笑って、
「一生懸命頑張ったって、1年や2年で破局ですよ。

あのビッグカップルだって、わずか2年で離婚したじゃないですかー。

彼女も別れますって!」
と、熱弁するように言った。
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