理想の男~Magic of Love~
小林に話して正解だった。

――そのうち別れるだろう

そう思うと、俺は気力を取り戻した。

愛莉が恋人と別れたら、ちゃんと自分の思いを伝えればいい。

片思いのこの気持ちを、愛莉にちゃんと伝えればいい。

この時の俺は、そう思っていた。


だけど、
「愛莉先輩、結婚おめでとうございます!」

3年目のその日に耳に入った祝福の言葉に、俺は持っていたポットを落としそうになった。

視線の先には、同僚や後輩たちに祝福されている愛莉の姿があった。

祝福を受けた愛莉は、
「ありがとう」

俺に向けてくれた同じ笑顔で仲間たちに返していた。

その笑顔は、誰から見ても幸せそのものの笑顔だった。

そしてその笑顔は、俺に永遠の別れを告げていた。

――ご苦労様です

その言葉と笑顔は、もう2度と俺に向けられることはない。
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