理想の男~Magic of Love~

「君は知らないことになってるから」

たった今出てきたばかりのホテルを、私は見あげた。

「――ここ、高級だよね…?」

ホテルの外観を見た後、呟いた。

私が今出てきたところは、テレビや雑誌でよく特集されている有名高級ホテルだった。

あの“藤”と言う男は、一体何者なのだろうか?

こんなところに泊まるくらいだから、よほどの金持ちだと言うことは理解できる。

でも…もう、会わないよね。

あの人に会う用事も、予定も…ないよね。

けど…電話番号が書かれた紙切れは捨てることができなくて、財布の中にしまった。

どうして財布の中にしまったのかは、自分でもよくわからない。

私には婚約者がいるから、2度と彼に会うことなんてないのに…。
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