理想の男~Magic of Love~
彼がそう言った瞬間、店内がざわついた。

「マジかよー」

「あそこもだいぶ落ちたな」

ガヤガヤと騒ぎ始めた店内に、男は逃げるように店を飛び出した。

藤は男の背中を見送った後、店員に視線を向けた。

「――あの、どうもありがとうございます…」

店員の彼女は藤に頭を下げると、お礼を言った。

「いや、急いでたから」

お礼を言われた藤は照れくさそうに笑いながら、カゴをテーブルのうえに置いた。

「お客様、600円…」

その様子を見ていた私に店員が困ったように声をかけた。

「えっ、ああ…」

買い物中だったことを思い出すと、財布から600円を取り出した。
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