理想の男~Magic of Love~
彼を追いかけた理由が、自分でもよくわからなかった。

本当に、何故だかわからなかった。

急いでるって言うならば、私は彼を追いかける必要なんてないはずだ。

彼を追う理由なんてないはずだ。

でも今すぐに彼を追いかけなきゃ、もう2度と会えないような気がした。

…会えない?

どうして藤に会いに行くの?

私には婚約者がいるんだから、藤に会いに行く必要なんてないのに。

「あの日、何があったんですか?」

だけど私は藤を追いかけて、彼の背中に疑問を投げていた。

「あの日?」

そう言って藤は立ち止まった後、私に視線を向けた。

彼は思い出すように少し考えた後、
「ああ、あれか」
と、呟くように言った。
< 33 / 270 >

この作品をシェア

pagetop