理想の男~Magic of Love~
藤は私から逃げるように歩き出した。

歩き始めたその背中に向かって、
「勝手に知らないことにしないでよ!」

私は叫んだ。

今は周囲の目を気にしている場合じゃなかった。

知らない設定にされたこっちとしては、黙っている場合じゃない。

「待ってよ!」

遠くになった背中を追いかけた。

だけど、追いかけても追いかけても…背中は簡単に追いつかなかった。

何で追いつかないのよ。

背が高い分、歩幅が広いのだろうか?

そもそも、背と歩幅って関係があるのかって言う話だけど。

「――あれ…?」

気がつけば、私は知らないところにいた。
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